兎同盟  

なきむし    





【兎同盟*なきむし】

 ある晴れた昼下がり。私はお茶会に行こうと、森の中を歩いていた。
「ふぇ…えぐ…っ」
 すると、よく知った泣き声が聞こえてきた。
 少し立ち止まり、溜息をひとつついて、そちらへと向かう。
「またこんなところで泣いているの?」
 茂みの中で泣いていたのは、やはりというか当然というか、シロウサギのハクトだった。
「みっちゃぁぁぁぁんっ!!」
 ハクトは私を見つけると、飛びついてきた。
 あーもぅ。こんなにべそかいて。
「で、また女王なの?」
 私はハクトが泣く原因をひとつしか知らない。
 ハクトはこう見えて、意地っ張りなのだ。
 彼女は眼をぱちくりさせて私を覗きこむと、黙ってうなずいた。
「はぁ…」
 また溜息がでる。いったい何度目だというのだろう。
「今度はナニ?」
「ん…っと、顔も見たくないって言われた…ふぇ……」
 私の胸に顔を押し付けて泣くハクト。
「あんな人、やめちゃいなよ」
 私はいつものセリフを言う。
「僕は、すき…だよ」
 でも、ハクトのセリフも同じ。
 ハクトは女王が好き。街中を歩いていた女王にヒトメボレしたんだって。
 それで王宮の試験を受けて女王の下で働き始めたらしい。
 だけどハクトも物好きよね。
 毎回毎回いぢめられて、けなされて、でも好きだって言うんだもん。
 信じられない!
 顔はよかったのかもしれないけれど、性格は最悪じゃん。
 まぁ、直接会ったことのない私が言うのもアレだけど。
「みっちゃん、僕、姫さまに嫌われているのかな?」
「あー…」
 そりゃあ、嫌われてるでしょ。
 じゃなきゃ「顔も見たくない」なんて言わないよ。
「僕、姫さまに嫌われちゃったら、生きていけない…ふぇぇんっ」
「あー、よしよし…」
 ハクトにとって女王は、生きる意味なんだもんね。仕方がないか。
 私は彼女が泣きやむまで、ずっと傍にいた。
 今日のお菓子は何かな…なんて考えながら。




執筆:2012年頃
掲載:2013.06.20