首吊りウサギ
心の闇を殺す方法
twitterで書いた物語です
「おはよう、」少女は布団の上でのびをして傍のぬいぐるみたちに呟いた。「今日は君にしよ
うかな、」白いうさぎを掴み取り頭を軽く撫でる。ふわりとした感触。口角を上げて笑うと、
布団からとびおきた。でも寒さに震えて布団に戻る。今日は日曜。二度寝日和。 《1》
「おはよう、」二度目の挨拶。「ねぇ、」布団から落ちたうさぎに話しかける。しかしうさぎ
は何も語らない。少女は長い耳を無造作に掴み、振り回した。当然、うさぎは無反応。しばら
くすると飽きたようで、ぽいっと部屋の隅に投げ捨て起き上がった。《2》
近くのショッピングモールに来た少女。その鞄からは白いうさぎが顔を出している。「ねぇ」
後ろから話しかけられ振り向くと同じ中学の女の子がいた。「あんたさ、中学にもなってぬい
ぐるみ連れて歩いてるの?」嘲る口調。見下す態度。少女は彼女が嫌いだった。《3》
(私は知っているんだから、あなたが影で私の悪口いってるの、)もやもやとした感情が浮か
び上がる。少女が思い切り睨みつけると彼女はグループの子に向かって言った。「あの子と一
緒にいるとバカがうつるから行こう」(こっちこそ一緒にいたくないわよ、)《4》
少女はベンチに座って、鞄からうさぎを引っ張り出す。「嫌い、嫌い、嫌い、」少女はうさぎ
に向かって言い続けた。すると、うさぎが少しずつ黒くなる。「悪口いうあの子も、それに
従ってるあの子も、何もしてくれないあの子も、みんなみんなみんな、大嫌いっ、」《5》
灰色になったうさぎを抱え、少女は家に帰る。「ねぇ」台所から出てきた母親が少女を呼び止
めた。「こんな時間までどこに行ってたの?」心配そうに聞く彼女を無視して部屋に戻る少
女。うさぎを取り出し鞄を放り投げる。布団に座り、うさぎに向かって言った。《6》
「うるさいうるさいうるさい、」最近は両親とあまりうまくいってなかった。勉強のこと、家
でのこと。何かにつけて干渉してくる母親も、それを放置している父親も、少女にとっては
「うざい、」となるのだ。だからまともに会話などしない。少女のプライドだった。《7》
だからこの日も部屋に閉じこもってうさぎに話しかける。「嫌い、嫌い、嫌い、」ボロボロ泣
きながらやつあたり。「みんな私をわかってくれないんだもん、嫌いだよ、いらない、消え
ちゃえ、」ついに真っ黒になったうさぎ。それは少女の心を表しているようだった。《8》
少女は寝る前の儀式を始めた。まず真っ黒になったうさぎの首に縄をかける。しっかりと結ば
れていることを確認してクローゼットを開け、ポールに反対の縄をつけた。落下することもで
きず宙に浮いたうさぎは首を吊られ、少女は心の闇を殺す。「おやすみ、」《9》
『おやすみ、』《終》
初出:2012.12.01
掲載:2013.07.03